あなたもステキよ

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あなたもステキよ〔第三章〕
とうとう「あなたもステキよ」の彼女とドライブしてしまった。

私は24時間365日仕事漬けだから、特別にドライブの日を決めて出かけるわけにはいかない。

だから配達をしながらのドライブだと言ったら、彼女はそれでもいいと言う。

そう言えば家内との初めてのドライブも配達しながらだった。

あの時はドシャブリのひどい天気だったが、家内は勤めていたからその日しか時間が取れな

かった。

ワイパーは音をたてて水をはじき返すが、雨は激しくフロントガラスを叩きラジオの音楽さえ

聞こえない。

しとやかに話す家内の声は聞き取れない。

今思うと猫をかぶっていたような変わり様である。

激しくフロントガラスを叩いた雨は、今の家内そのものである。

それに比べ彼女とのドライブは、なんと天気のいいことか。

春を想わせるおだやかであたたかい。

CBCラジオから流れる永六輔の訳の分からない話でも気分は最高。

軽トラで悪いねと言うと「タオカサントイルカラステキヨ」と職業病の手を私の太ももに置く。

夜だけだと思ったら昼間でも手は職業病にかかっているようだ。

かなり重症なんだろう。

今日は夢の島への配達である。

対岸の桟橋から荷物を船に載せかえて運ぶ手間のかかる作業をする。

船は心地よい風も運んでいく。潮のにおいも私は好きだ。

数分の船旅だがこの時がホッと一息つける空間である。

私のとなりに座っている彼女の目は、遠くの海を見ていた。

哀愁をおびた瞳をみていると、夜だったら抱きしめただろう思う。

彼女は私に言う

「コノウミハワタシノクニニツナガッテイル、タオカサンハワタシノココロトツナガッテイナイ」

こんなに近くにいるのに自分の気持ちが分からないと、真昼から私を誘惑しようとする。

歯は入れ歯だし、髪は薄いし、下半身に元気のない60の爺のどこがいいと言うのだ。

私達は配達を終えて本土に戻った。

10年目の三菱ミニキャブは元気に走る。

暖かい日差しが窓から入ってくる。

車内はクーラーを入れたいほど暑い。

往きと同じように職業病の手が太ももの上にある。

乗り心地の悪い軽トラは、震動も激しい。ガタガタするたびにすらりと長い指が、

ピアノの鍵盤をたたくように移動しはじめた。

伊勢ジャスで700円で買った紺色のズボンのファスナーに指がかかった。





















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