あなたもステキよ

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あなたもステキよ〔第八章〕
店の裏にある楽屋のような部屋に案内された。

ドアを開けるとキンキンギラギラの七色の虹のように

色とりどりの夜の衣装が、壁のいたるところに掛っている。

タバコ、酒、化粧のにおいに外国人特有のにおいが鼻を突く。

若い時訪ねたシンガポールの裏通りのにおいを思い出した。

座る場所がないほどに荷物が散乱としているのに

ママは「座って」と言う。

私は女物の下着を、汚いものでもつかむように2,3枚あらけて座った。

「何か飲む」と聞かれたが「いい」と断る。

ママはラークマイルドに火をつけ煙を揺らしながら、

一息ついて話し始めた。

「ナオミは東京に行ったのよ」と言う。

私は練馬ナンバーのベンツに乗っていた黒いサングラスの

男を思い出した。

「ナオミのお兄さんが、暴漢に襲われて大怪我をしたのよ」と言った。

軽トラックでのデートの時の電話がそれだったのかと気づいた。

驚いたり悲しんだり、言葉はわからなかったが顔の表情で、

何か大変なことが起きたのだと私にもわかった電話だった。

「私はくわしいことはわからないが、お兄さんは東京大学で

近代政治学を勉強していて、中国の民主化運動をしとると

ナオミに聞いたことがある」と。

そして、ナオミのお父さんは、北京大学教授でやはり中国共産党の

独裁廃止の民主化運動で、2年前国家政権転覆扇動罪で逮捕され、

その後の消息はわからないらしい。

お母さんは小学校の先生をしていたが、お父さんが逮捕されてから、

身体を壊し今は先生もやめ、病院に入院していると聞いていると、

政治より性事のことにくわしいママがしっかりした言葉で話す。

お父さんが逮捕された時、ナオミは北京大学2年生だったが、

中退して留学しているお兄さんを頼って昨年日本に来た。

しかし、東京にいてはナオミにも危険がおよぶと、

知り合いを通じて伊勢に連れてきたと。

尾行、盗聴、監禁が反体制者には茶万事に起こるので、

東京へ行く途中名古屋で、携帯は解約したようだ。

それで「現在使われていません」のメッセージが繰り返される

意味がわかった。

私の知っている範囲で、社長に話したのですとママは、

喉に詰まったものがとれたようにスッキリした顔になったが、

ナオミはそんな境遇の娘だったのかと私の顔は曇った。

楽屋に長居をしたので、酒に酔った以上にそれも悪酔いした

気分で、隣にナオミのいない三菱ミニキャブでフラフラしながら

家路を急いだ。

家内の顔がだんだん近くなってくる。

「伊勢の会議、こんな夜中までやっているの」と罵声が耳を刺す。




















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