あなたもステキよ

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あなたもステキよ〔第四章〕
交差点に練馬ナンバーのベンツが止まった。

型は少し古いが田舎ではそんなにお目にかかる車ではない。

磨かれたボンネットに信号機の赤い光が、カラーコピーのように鮮やかだ。

黒いSクラスは、車の王者の風格がある。

乗っているのは男女が二人。

二人とも黒いサングラスをかけていた。

助手席の女の髪型には見覚えがある。

白内障の目では歩道を挟んだ距離からは、はっきりとは見えないが輪郭が似ている。

もしかと思うが、朝の10時前ならまだ寝ている時間ではないだろうか。

それも男と乗っている。

話では店は朝4時クローズで、寝るのは6時だと聞いていた。

今頃が一番深い眠りについている時間なのに、今配達に行く私の三菱ミニキャブと向かい合っている。

彼女の左手も右手だけでなく職業病に罹っているのだろうか。

罹っていたら男の太ももに置かれているはずだ。

そんなことを考えていると、信号が変わった。

ベンツの出足は速い。

私の10年目の愛車の横を疾風のごとく走り去った。

私は右に目をやった。

黒いサングラスで目の動きは分からなかったが、横顔は「あなたもステキよ」の彼女だった。

「どこに行ってたのだろうか」 この疑問が頭を過ぎる。

スーパーの開いてる時間ではないから買い物ではない。

病院に行ってたとしてもこんなに早く帰れるはずがない。

救急だったとしたら、あんなに凛とした顔はしてないだろうし、店の子が誰か付いてるだろう。

買い物でもなければ病院でもない。

「どこ」は一ヶ所だけになってしまった。

若い男と夕べはホテルだったのだ。

ホテルからの帰りだったのか。

そう思い込むと他の考えが思い浮かばず、確信へとシフトしていく自分の嫉妬心に驚く。

年を経ると嫉妬深くなるってほんとうなんだと、これまた確信する。

その彼女が、今私とドライブしている。

そして右手だけでなく職業病に侵された左手が動いた。

ズボンのファスナーが1cmほど開いた。













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